昨今、変異株コロナウイルスによって、20~30代の重症化が目立ってきているというような報道をよく耳にする。だが、果たしてこれは本当なのか?報道では単純に「病床が逼迫している」というような表現のみで、具体的なデータはほぼ出てこない。なので、普通の報道を見ているだけではこれの真偽は不明である。
ということで調べてみた。データは「国立社会保障・人口問題研究所」の「新型コロナウィルス感染症について」と、「東洋経済ONLINE」の「新型コロナウイルス国内感染の状況」から引用させて頂いた。
http://www.ipss.go.jp/projects/j/Choju/covid19/index.asp
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
このサイトにある「死亡者性・年齢階級構造(2021/5/17時点)」のデータを
ダウンロードすると、2020年03月31日からの年齢別死亡者数のデータが取得できる。これを見ると、2021年5月17日の段階で、20代の死亡者は男女合わせて6人、30代は19人である。死亡者総数は11,642人なので、死亡者全体から見た20代の死亡者の割合は0.05%、30代は0.16%である。重傷者が増えるという意味は、死亡者にしめる20〜30代の死亡者の割合が上がっているか、もしくは年代別感染者に対する年代別死亡者の割合が増加していることを指す(定義)。マスコミの報道のように、実際のデータがこの定義に当てはまるか、こちらのデータなどを加工して20〜30代の死亡率を比較してみよう。
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このグラフは2021年05月17日までの検査陽性者数、総死亡者数、20代死亡者数、30代死亡者数をプロットしたものだ。見ての通り、総死亡者数と比較すると、20代・30代の死亡者数はグラフには全く出てこない。5月17日時点で、20代の死亡者は6人、全死亡者数の0.05%、30代は19人で0.16%だから当然だ。20代・30代の死亡者の全死亡者に対する割合も、20代は昨年秋頃から0.03〜0.06%でほぼ変わらない。5月に入り死亡者が3名から6名に増えたことで0.03%から0.05%に上がっているが、誤差の範囲。30代も同じような傾向だが、昨年夏には0.40%だったのが今年3月末には0.14%にまで下がっている。その後若干上がって0.16%となっているが、こちらも上昇傾向とは判断しにくい。
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これは2021年05月19日現在の年代別検査陽性者・死亡者数のグラフだ。見ての通り検査陽性者は圧倒的に20代が多く全体の22%を締めており、次いで30代、40代・・・となっている。この割合は当初からあまり変わっていない。年代別の検査陽性者・死亡者の推移を調べたかったのだが、該当するデータは探せなかった。なので推測するしかないのだが、当初からこの年代別検査陽性者の割合に大きな変化がなかったとなれば、20代・30代の重傷者が増加しているとすれば、その増加率は検査陽性者、全死亡者の増加率より20代・30代の死亡者の増加率のほうが高くなるはずだ。昨年8月31日と今年5月17日で比較すると、検査陽性者数は10倍、全死亡者は9倍になっているが、20代の死亡者は6倍(1人→6人)、30代は4倍となっていて、20代・30代の重症化が進んでいるということに結びつくデータは得られなかった。
マスコミなどは何を根拠として「20~30代の重症化」を叫んでいるのだろうか?