ムカデの母が買いものし忘れに気がつき息子ににおつかいを頼んだ。息子は二つ返事で買いものに出かけたのだが、待てど暮らせど帰ってこない。母親は「息子に何かあったのかも知れない」と心配になり、息子を探しにいくことにした。
母親が玄関にいくと、そこには「まだ半分しか履いてないよ…」と半べそをかきながら一心不乱に靴の紐を結んでいる息子がいた。
ある人から聞いた話なのだが、その人の家の風呂場には洗剤の入ったタライに入れられた沢山の子供の靴があったのだそうだ。タライに入れられたままいつまでも放置されているので邪魔で仕方がない。だから風呂に入るたび、早く洗えという意味も含め、そのタライを風呂場から脱衣所のほうに出していたらしい。しかし、次の日風呂場にいくとまたもや風呂場にタライがある。このタライのせめぎあいはかなりの日数続いたようだ。
ある日その人が風呂場に入ると、いつもあったタライがない。やっと洗ったのかと思ったのだそうだが、そのタライはそのままの姿でベランダに移動していただけだったらしい。
彼曰く「あの靴、子供達の足が大きくなってもう履けないよ。」