所有する喜び - オートバイ解体新書
ん~、わかる、わかるぞその気持。そうなんだ。バイク好きはマシンを所有しているだけでかなり幸せなんだよなぁ。俺もしばらく乗らない時期があったが、それでも心の支えは「マシンがある」ということだった。気がついたらもう簡単には動かない「ただの屍のようだ」状態にしてしまっていたにも関わらず、所有していることで安心感を得ていたっけ。
バイクを持ちつづけて既に33年。たった半年程度だがバイクがない時期があった。その時の寂しさはなんとも言いようのないものだった。いつも傍らにあった物がないのだ。あの時「ああ、やっぱりバイクがないとダメだ・・・」と、改めて思った。
学生の頃はカネがなかったので、なけなしの金で買った
CBX400Fをガタガタになるまで乗った。雨の日も風の日も、若干雪が降っていても乗った。あの頃の俺にとって、バイクは大事な足であり忠実な下僕であり素敵な相棒だった。働いてからはあまりバイクに乗る時間が取れなくなったが、金には少し余裕が出来た。だからマシンは新車で数台買い替えたし、一番多い時で4台所有していた。結婚してからは時間的にも金銭的にも余裕がなくなり、バイクに乗る時間がますます取れなくなった。不要なマシンは処分し、
一番大事なマシンだけを残した。そのマシンも数年放ったらかしにして、結局は
買い替えた。
俺にとってバイクは完全に俺の人生の一部となってしまっている。今まで生きてきた傍らにはバイクがあり、
歴代のマシンにはそれぞれの思い出がある。それは金では買えないし、単に所有欲を満たすためだけでは決して味わえないことだ。
所有は金さえ都合がつけばどうにでもなる。所有するだけで幸福感が味わえるのだったらそれでもいいだろう。だが、俺はバイクのエンジン音、振動、加速感、コーナリング、その時にしか味わえない季節の色や臭いを感じるのが大好きだ。マシンを所有しているだけでは絶対に味わえない感覚の虜になっているといってもいい。大切なのは、マシンが味あわせてくれたその時々の記憶であり、思い出なのかもしれん。乗り込んでいない人にはわからんかもしれんけどね。