ある場所に行ったときの話。
その建物は以前は建物の一部を地下駐車場として利用していたらしいのだが、使い勝手もよくないし利用頻度も低かったため、駐車場を潰して事務所等に改築したという。そんな話を聞きながらその建物を一通り案内してもらった。
しばらくたってから案内してくれた人と話をする機会があり、その人に「そういえば地下にあった駐車場跡のスペース、もったいないですよね」と話すと、その人はそんな場所は無いという。「え?ほら、あの小さな扉を開けて入って行ったじゃないですか」と言っても、その人は怪訝そうな顔をするばかりだ。
その場所は今でも鮮明に覚えている。地下のどの場所だったかは忘れたが、とある部屋の少し小さな扉を開けると、入り口を潰された地下駐車場が確かにあったのだ。コンクリートがうちっ放しで、駐車できる台数は5〜6台分もあっただろうか。駐車場の床はその扉の位置から60cmほど下にあり、降りるのに少し労力が必要そうだった。床には既に白くホコリが積もっており、全く使っていないのが一目でわかる。右手の方には多分入り口だったような場所があり、そこは完全に塞がれているようなのだが蛍光灯の光が十分に届かず、確認できない。ちょっと不思議な感じがした場所だった。そのことを話しても、その人は「そんな場所ないですよ。」と言うだけだった。
先日、たまたまその建物をまた訪れる機会が出来た。その時にその建物の中をもう一度案内してもらった。案内してくれた人は前の人とは違う人だったので、その人にも同じ話をしてみた。しかしその人もそんな場所はないという。実際に図面を見ながら案内してもらったが、そんなスペースはない。
俺が見たあの場所はなんだったのだろうか。俺は夢でも見たのだろうか。そうであれば、夢と現実の区別がつかなくなっていることになる。俺の脳は何をつなぎ合わせてあの様な記憶を作り出したのか、なぜそんな記憶を作り出したのだろうか。
いや、もしかしたら、作り出したのではなく流れ込んで来たのかもしれない。これはそんな気がしてしまうくらい鮮明な記憶なのである。
少し涼しくなりましたよ