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2009年12月14日

既存商品を値引販売するのはよく考えてから

[うんちくん]
今だにコンビニ弁当を値引き販売すればどうなるかというエントリにコンスタントにアクセスがあるので、ちょっと調子にのって値引販売について書いてみる。

今はデフレでどこもかしこも安売りばかりだが、一番目につくには50%割引とかという単純な値引販売だ。この値引販売については、以前にもいくつか書いたことがある。
商品価値は値段で決まる
安売りはだめだっていっただろ
「100円マック」でも儲かるなんてレアケース
これだけでは、なぜ値引販売はよく考えて行わないと大損するのかわからない人も多いだろう。

俺も以前経営者から「売上確保のために安売りしたらどうか」と言われたことがある。その安売り方法が安直な割引販売だったので、これはまずいと思い「参考までに」と経営者に提出したのがこれに近い奴だった。少し考えれば誰でもわかるし、あまりにも当たり前のことなんだけどね。

まず定価で1個1000円の商品があったとしよう。その商品の材料費は300円だ。これをそのまま定価で販売すれば粗利益は700円。工場とかの場合はこの額から労務費とかも引いて粗利とするけれど、ここは話を単純にするため労務費は考慮しない。

この商品を10%値引して販売すれば売価は900円となり、粗利額は900円-300円=600円となる。さて、気分的にはたった10%、100円の値引なのだが、粗利額は600円÷700円=85.7%まで下がる。定価販売と同額の粗利を稼ごうとすれば、販売個数を700円÷600円=1.1666の16.7%もアップさせなくてはならない。そして、材料費率30%であれば70%以上値引きしたら原価割れだ。

これをグラフにすればこうなる。超当たり前だね。
[PDF]

下のグラフのとおり、材料費率が上がれば上がるほど粗利額は落ちていく。これも当たり前。
[PDF]

ちなみに、粗利同額を叩き出すためにどのくらい販売数をアップさせなければならないかは次の式で表される。
必要アップ率=定価時の粗利÷値引き時の粗利
      =(定価×粗利率)÷(定価×粗利率-値引額)
      =(定価×粗利率)÷(定価×粗利率-定価×値引率)
      =粗利率÷(粗利率-値引率)
簡単に30%OFF!とか言うけれど、材料費率40%の商品を30%OFFで販売したら、定価販売時の2倍売らなきゃならないわけ。だけど買う方から見れば「たった3割引き?」でしかない。3割引いて2倍売れる商品ってそんなにないんだよな。だから通販とかでは粗利を稼ぐために2個でいくらとかで販売するんだよ。1個で値引きするより2個で1個分以上の粗利を獲得できる値段で売った方が価値が上がるし粗利を稼ぎやすいと踏んでいるんだよね。

この商品は1人なら1時間に5個まで、2人なら11個、3人なら18個までというように、人数が増えればその生産性も向上するものとしよう。で、製造人件費を1000円/hとして、その製造人件費を加味した粗利額を算出すると、定価販売で5個販売すると2500円となる。この2500円を上回る粗利を稼ぐに組み合わせはどうなるかというと、こんな感じになる。
[PDF]

40%以上値引きしたら4倍の20個売っても追いつかないんだよね。これを骨折り損のくたびれ儲けと言わずしてなんという?

大量生産・大量販売の場合、労務費の占める割合がまったく変わってくるので、生産性アップの分くらいは値引きしてもOKだろうけれど、売るのは大変だよね。売れずにそのまま持っていてもどうしようもないので、運転資金(要はキャッシュ)欲しさに投げ売りするところもあるわけだな。

これ以外にも値引きした商品が客引き用であったりとかする場合もあるので、商品数が多い場合は値引きが全体の粗利をどう変えるかを十分考慮するべきなんだよね。特に飲食店とかでランチセットなどのようにその物自体で完結する商品を値引きすると、いままで定価で食っていた人が値引き商品に走るだけで、客数アップどころか売上減になってしまうことが多い。だから新メニューを投入したりビール1杯だけ原価でみたいな次につながる奴を安く販売するわけ。

そんな考えなしに単なる値引きに走ると、必ずや行き詰まるよ。


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posted by oyajiman at 2009年12月14日 23:00:00



コメント

山師

ちょっと前のダンピング競争の話題ですが、マックが平日半額52円のハンバーガー(のようなもの)を売り大人気でしたが、結局は売れば売るほど赤字はふくらみ(土日に2倍の額で買うバカがいなくなる、もくろんだはずの副食品での売上は“安いから買う”ような人間は手を出さない)
結局は、日本マクドナルドの経営権をデフレ販売wしちゃったケースがありました。

狂牛前の吉野家では、原価割れしない250円販売を行いましたが、上記のような客が大挙して訪れ供給が追いつかず、売上は上がったものの失敗と反省、260円~300円の中でテスト販売を行い、供給システムを変え原価管理を行った上で売上比率から280円に設定。

これって新聞とかでは同じ「安売り」でしかないんですが、意味は違いますよね。
すき屋が前者の方式でとにかく安くと最近値下げ発表しましたが、自分の首絞める結果になりそうです。

近所の7-11は弁当仕入れ数と種類が減り、売れ筋商品しか置かなくなりました。
今度は種類が少ないとか、正義のために闘う消費者が文句言うんだろうな。
2009年12月15日 09:44:30

oyajiman

安売りに飛びつくほとんどの人は、その時一回こっきりなんですよね。まずリピーターにはならない人たちなんで、その層のために撒き餌をしても効果が見込めないのは至極当然ですね。

つか、「いい物を安く」なんて言うからおかしくなっちゃう。いい物は高くなきゃ、それこそ価値がなくなります。だから言葉を省略せずに、きちんと「(そこそこ)いい物を(それなりに)安く」と言うべきじゃないかと。
2009年12月15日 19:08:39

結構楽しんでます

 コンビニの見切り販売に関しては、皆さんもご存じの通り、廃棄にかかるチャージ(契約上の問題点でもあるけども)がもったいないだけの理由でされてるオーナーさんがいるようです。本部不信がつもれば、こういう結果になるのでしょうか。
 確かに値下げしても廃棄を出さなかった方が現金回収できることから、最終的な収益は改善するようです。
 ただ、わたしが思うに、どこ向いて商売してんの?って言いたいです。本部とのチャージ金額のやり繰りで利益を出すのが商売じゃないでしょ? お客さんからいただいたお金をやり繰りして利益を出すのが本来の姿かと。本部とのチャージのやり繰りで汗出すのなら、お客さんに気持ちよく買い物してもらえるように棚でも拭いたら、棚に並んでいる商品も新鮮に見えるかもよ。本部とのチャージをやり繰りしている人は、コンビニするよか、節税コンサルタントでもやったらどうでしょうか。
 契約がどうなってるからオーナーが損だとかなんだとかって、新聞記事には書かれていますが、オーナーも発注の責任を負ってることが片落ちだったり、お客として利用している人間には、一つの記事や情報だけではわからないことが多いです。
2009年12月16日 07:58:04

oyajiman

コンビニの見切り販売は、外野から見る限りでは「俺だけが得したい」の争いに見えてしまうのが残念に感じます。どんなにいい事いったって、所詮自分が儲けたいだけなのかなぁと・・・穿った見方をすれば、値引き販売でもなんでもOKにしたら本当に幸せになれるのか見せてもらうよってところです。

実際には本当に死活問題のところもあるのでしょうが、そういう本当に困っている加盟店を利用してうごめく別の意志があるような気がして嫌な気分になります。
2009年12月16日 17:42:35

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