しばらくして、B社は資産を買い取るファンドと一緒にやってきた。だめだこりゃ社再生の大まかなスキームがまとまったというのだ。
早速だめだこりゃ社の経営陣を集め、そのスキームについて説明を受けることになった。
だめだこりゃ社の再生は、年間売上に匹敵する銀行債務の圧縮をまず最優先に行わなくてはならない。これは馬鹿でもわかるのだ。では、どうやって借金を圧縮するのか…
B社は3つのスキームを用意してきた。ひとつは「私的整理」による再生、あとは「民事再生法」を用いた方法が2つであった。その中で、B社はスポンサーつき民事再生法の適用を勧めてきた。
これは非常にあたり前の選択である。金融機関の有利子負債圧縮が大きな目的のひとつであるから、金融機関が納得できる形であることが一番良いのだ。経済合理性という面ももちろんある。しかし、それ以上に事なかれ主義サラリーマンがはびこる銀行において、「出世に響かず判子が押せる」という事は大きいことなのだ。民事再生法のもと、裁判所が決めたのであれば銀行は黙って判子ことができるのだ。民事再生法を適用しましたとなれば、表面上は抵抗を示すだろうが内心はほっとするはずなのだから。
しかし、だめだこりゃ社の経営陣、金融機関から来た経営陣は「民事再生法」適用には強い難色を示した。商売が毀損するというのである。
確かにだめだこりゃ社は、商売の契約で民事再生法の適用などをした場合、契約が打ち切りになるというものも多いのは事実である。しかし、この理論はまったくのでっち上げであり他意があったことはのちのち判明することになる。
その理由をたてに、だめだこりゃ社の経営陣は「私的整理による再生」を前提として、4つの条件をつけたのである。
1、従業員を守ること
2、業者を守ること
3、社名を継続すること
4、オーナーの立場を守ること
これがその4つの条件であった。